交流電化 wikipedia|無料辞書
交流電化(こうりゅうでんか)とは、
鉄道の電化方式の一つで
交流電源を用いる方式。
◆ 概要
単相交流を使うものと、
三相交流を使うものがある。さらに単相交流には、商用
周波数(50〜60Hz)を使うものと、その2分の1から3分の1の低周波数を使うものがある。現在、主流は商用周波数の単相交流で、
電圧は主に25kVを使用する。
◆ 特徴
;送電ロスが少なく地上設備のコストが低い
:同一電力を送電する場合のロスはおおむね電圧の2乗に反比例することから、電圧はできるだけ高くした方が送電には有利である。交流は
変圧器を用いて容易に電圧を変えられるため、1500〜3000Vを用いる
直流電化の約10倍の高圧が用いられており、送電ロスが少なく
変電所間隔を長く取ることができる。さらに、直流電化に必要な
整流設備や
き電線(架線に並行した電力線)も不要であり、全体として地上設備コストの低減が図れる。そのため、直流電化区間には高い
鉄塔を造って特別高圧線やき電線等を配備している複雑な電線設備から比較して交流電化区間は一般住宅街並の
電柱の高さに留まっており、シンプルな電線設備である。ただし、高電圧ゆえ地上設備の絶縁距離を長めにとらなくてはならない。
;大容量送電が可能
:交流は高電圧を用いることから、直流に比して小さい
電流での送電が可能である。したがって、大きな出力を必要とする電気車両への大容量送電に適している。日本の新幹線は高速走行で大量の電力を必要とするため、交流電化を採用した。
;電動機起動制御のロスが少ない
:
抵抗制御を用いた直流車では、主
電動機に与える電圧を制御するために、
抵抗器を用いて一部を熱として捨てていた。これに対し交流車では、無段階に電圧を制御できるタップ制御や
サイリスタ制御が基本となっており、無駄なく電力を利用できる。
;粘着係数が高い
:交流車は粘着係数が高いという長所を持つ。直流車では低速で電動機を直列につなぐが、電流一定のために、空転が始まっても
トルクが下がらず回転数がむしろ上がる傾向になる。一方交流車では一般に並列接続であるので、回転が上がると電流が減少してトルクが下がり、容易に再粘着する。また直流車は抵抗制御を用いることにより、加速中に一段ごとに電流が一時的に増大して空転を起こしやすいのに対し、連続に電圧を変えられる交流車は優位であり
[曽根悟「インバータ制御電車の実用」『鉄道ピクトリアル』465号、10-17頁。]、一時は交流
電気機関車のD級(動軸数4)は直流電気機関車のF級(動軸数6)に匹敵すると評された
[原勝司「国鉄電気機関車発達史」『電気車の科学』1962年6月号、53頁。]。
:ただし、後に直流車・交流車の区別なく
VVVF制御方式が主流となり、再粘着制御が容易に行えることから、交流車としての利点は少なくなっている。
;車両コストが高い
:特別高圧を
電動機が使用可能な電圧に下げるため、車両には
変圧器を搭載しなければならない。また、主電動機は一般に直流を電源として用いるため
整流器も必要であるほか、
集電装置も高電圧対応である必要がある。したがって、車両の製作費およびメンテナンスコストが高くなり、重量も大きくなりがちである。
以上が交流電化の特徴であり、地上設備と車両のコストに鑑みると、需要が少ない地域の輸送や
動力集中方式に適した方式と従来言われてきた。
現在では整流機器が安価になったことにより直流電化の費用が低下したことに加え、VVVFインバータ制御により直流電車の性能が向上したため交流電化のメリットは低下し、新幹線のような大電力の必要な高速鉄道以外での交流電化の優位は失われてきている。
◆ 沿革
◇ 初期の交流電化
電気鉄道は、直流電源を用いる方式ではじまった。しかし市内電車や近距離鉄道には向いていたが、長距離鉄道には変電所の建設や送電のコスト、電圧降下等の問題があった。そのために交流電化を試みるようになる。
19世紀末には低電圧の三相交流と誘導電動機を用いた方式が
スイスの
登山鉄道である
ユングフラウ鉄道(1125V 50Hz、1898年開業)と
ゴルナーグラート鉄道(750V 50Hz、1896年開業)で採用されている。また、
ドイツでは
1892年より
ジーメンス社がこの方式の試験を進めていた。その後、同社や
AEGなどが参加した高速電気鉄道研究会の実験路線(
ベルリン郊外)で
1903年に電車と電気機関車がそれぞれ鉄道史上初となる200km/h突破(210km/h)を達成している(これは当時人類が搭乗可能な交通機関の最速記録でもあった)。
しかし、三相交流電化は
架線を複数設置しなくてはならず、また速度制御が難しい。このため、
ハンガリーのガンツ社が開発した技術を採用した
イタリア北部(3000V 15Hz、1902〜1917年もしくは3600V 16 2/3Hz、1912〜1976年)を除くと、1906年に開通した瑞伊国境の
シンプロントンネル(3000V 15Hz、1930年に単相15000V 16 2/3Hzに変更)などを局地的なものに終わり普及することはなかった。
一方、単相の交流で
交流整流子電動機を直接駆動することも考えられた。この場合、周波数に比例して発生する変圧器起電力により、整流悪化が発生するため、25(= 50/2)もしくは16 2/3(= 50/3)Hzなど周波数の低い交流電気を使用する。1904年に
ジーメンスの手によりドイツ・バイエルン地方のムルナウ〜オーベルアンメルガウで実施したのがはじまりである。欧州では当初は3000〜6000V 25Hz、続いて、5000V 16 2/3Hzを経て、15000V 16 2/3Hzに落ち着く。この規格は1912年にドイツの幹線鉄道の標準電化仕様として採用され
[ただし、ドイツが電化を精力的に進めるのは1920年代以降である。]、現在でもドイツ、スイス、
オーストリア、スウェーデン、ノルウェーの幹線鉄道で多用されている。独自の送電網を整備する必要があることや、変圧器が重くなるのがデメリットである。このほか、アメリカでは1905年に
ペンシルベニア鉄道で、11000V 25Hz電化が実施され他にも拡大した。
◇ 商用周波数方式の実用化
20世紀初頭になると、商用周波数はドイツで50Hz、アメリカで60Hzに統一しようとする動きが出てくる。この周波数のまま電源に用いる方式も考えられた。車内で直流電気を発電して
直流電動機を駆動する方式などが考え出されたが、機器類が大きくなり車両重量が増大するなどのデメリットが大きい。
スイスでは、1904年に実用化したものの1年限りで終わり、結局、普及しなかった。
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