アーチ式コンクリートダム wikipedia|無料辞書
イングリダム(グルジア)">
アーチ式コンクリートダム (Concrete Arch Dam,
CAD) は、主に
コンクリートを主要材料として使用し、
アーチ止水壁にかかる
水圧を両側面の岩盤で支える型式の
ダム。略して
アーチダムともいう。
◆ 特徴
アーチ式コンクリートダムは、両側面岩盤の強固な地点に適用できる型式。コンクリートの使用量が少なく、
重力式コンクリートダムに比べて工費圧縮が可能で経済性に優れる。
アーチダムには様々な亜型があるが、最も多いのは下流側に湾曲した
ドーム型アーチ式コンクリートダムである。形状が複雑で設計が難しいが、最も少ないコンクリートの量で建設でき、これが現在まで続く主流のアーチ式コンクリートダムの基本形となっている。このほかにも
放物線アーチダムや湾曲していない
円筒型アーチダムなどがある。
アーチダムの建設には、莫大な
水圧に耐えられるだけの強固な両側基礎岩盤の存在が絶対条件であり、建設可能な地点は限定される。フランスのマルパッセ・ダム決壊事故()では基礎岩盤の強度が不十分であったことが原因とされている。これを受けて
黒部ダムでは両側に
ウイングを設けて水圧に耐えられるようにした。亜型として複数のアーチが連なる
マルチプルアーチダムや、重力式コンクリートダムの特徴を併せ持った
重力式アーチダムがある。
洪水吐き(こうずいばき)については、ほとんどのアーチダムに常用洪水吐き(非洪水時・小規模の洪水時の放流設備)が備えられており、ダム堤体中央部に2~3門のゲートを設置し放流を行う。国内最大級のものは
殿山ダム(
日置川・
和歌山県)に設置されているものである。
スキージャンプ式の洪水吐きをダム両側に備えるもの、山腹に洪水吐きを設けダム自体は洪水吐きを設けない非越流型もある。また、非常用洪水吐きについては自然越流・ゲート放流を含め中央越流型洪水吐きが多く採用されている。
また、多くのアーチ式コンクリートダム堤体下流側の表面には巡視路が設けられている。これは
キャットウォークと呼ばれるが、
ロックフィルダムにおける巡視路は「
犬走り」と呼ばれる。
◆ 世界のアーチダム
古くから
ヨーロッパなどで建設され、中世、
スペインに建設された
アリカンテダムは300年間堤高世界一の記録が破られなかったという話が残されている。現在世界的に堤高の高いダム(200.0m以上)ではこの型式が採用されていることが多く、特に
アルプスを抱える
スイスを始め、
イランや
トルコなど
中近東に建設されている例が多い。特にスイスについては、堤高100mを超えるダムの大半がアーチダムである(
[外部リンク] 参考1)。
現在既設ダムで最も高いダムは
グルジアの
イングリダムであるが、
中国で建設されている
メコン川上流の
小湾ダム(シャオワンダム)が完成すると、世界で最も高くなる。また、世界で最も総貯水容量が大きい
カリバダム(
ジンバブエ・
ザンビア)もアーチダムであり、その総貯水容量は約1,806億トンを有し
琵琶湖の約68倍の容量を誇る。
◆ 日本のアーチダム
日本では
三成ダム(
斐伊川・
島根県)が
河川法上の規定によるダムとしては最初のアーチ式コンクリートダムであるが、大正時代に旧・武蔵水力電気(
東京電力の前身の一つ)が
埼玉県に建設した浦山堰堤(堤高14.0m。現在は
浦山ダムに水没)が日本初のアーチ状堰堤建設例とも言われている。小堰堤まで含めれば
青森県にある大湊旧海軍水道用堰堤が、現存する最古のアーチダムということになる。
日本で最初の高さ100mを越える大規模アーチダムは
上椎葉ダム(
宮崎県)である。現在のアーチ式コンクリートダムで見られるオーバーハングした3次元的形状が取り入れられた最初のアーチ式コンクリートダムは殿山ダムが最初である。その後アーチダムの研究が活発化するに連れ盛んに建設されるようになり、
1963年(昭和38年)に完成した
黒部ダムは日本最大のダムとして、日本のダムの歴史に燦然と輝いている。ダムの形状としては美しい外観を有していることから、黒部ダムや
温井ダム(滝山川)、
豊平峡ダム(
豊平川)などのように観光地化しているダムも多い。
強固な岩盤を有する峡谷に建設されることから、
犀川や
鬼怒川の様に同一河川に集中して建設されている例もある。近年は建設に適する地点が極めて少なくなり、現在では
川辺川ダム(
川辺川・
熊本県)の建設があるのみである。今後この型式で建設される可能性は極めて少ないものと考えられる。
◇主なダム